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The day when I died

もう、どこから歯車が狂っていたのかも分からないくらいに。

※今生きている「湊」の全ての基になる、昔のお話。
暗くて重すぎ注意ですが、今更そっとこちらの片隅において置きます。





薄暗く、古ぼけた部屋の中。
割れた茶碗と皿、倒れた椅子、散乱した冊子。
「何で、何でできないのよ!貴方は碇の弟でしょう!?」
その真ん中で、涙を流しながら叫ぶ母上。

此処が、俺の終着点。

俺はただ呆然と、そこに立っているだけで。



「…母上、」
「黙りなさい!言い訳なんて見苦しいわ!」
近距離から叫び声と共に、放たれた湯飲みが、湊の頭のすぐ脇の壁にぶつかる。
湯飲みは小さなカケラとなって足元に散乱して、その中に、赤が混じる。
鋭い痛み。たった今飛び散った破片がつけた傷口から
床に落ちた赤と同じ物が流れていく感覚がした。

見上げた、母の顔。何を読み取ることも許さない瞳が鋭く湊を捉えている。
それでも溢れて、苦しいほどに伝わってくる、母の湊に対する負の感情の塊。
嗚呼、嗚呼、読み取ってはいけない物だけ、読み取ってしまう。
「…ごめんな、さい。母上。」
出血した額を抑えながら湊は俯く。顔が見られない。

許してください。俺、もっと頑張るから。貴女まで俺のこと、…

母が近寄ってくる気配に身体が固まる。次に感じたのは、首と背中に強い衝撃。
湯飲みの欠片が背中の下で、小さく割れる音がした。
「……っ!」
息が、上手く吸えない。目を開いたら、目線の先に天井が見えた。
少し視線をずらせば、母の手が自分の首に伸びている。

…何をするの?

恐怖と焦りと、純粋な疑問。
抵抗しようとした右腕は、母のもう片方の手に簡単に押さえつけられた。
「何故貴方が生きているの。何故あの子が死ななければいけなかったの?」
首を締め付ける力を強めながら、母は心から怒りを込めたように言い放つ。
その言葉を理解する前に、苦しさが脳を支配して、湊は小さく目を見開いた。

「……ぁ、…!」
空気を求めて口を開く。眉間に小さくシワが刻まれる。
自由な方の手で自分の首を絞める母親の手を掴むも、
その力が弱まることはなく、むしろ増すようにも思えた。

お願い、怒らないで。謝るから。頑張るから。
お願い、俺のこと、嫌いにならないで。いらないって、言わないで。

何も分からないまま、ただただ呟いた。声にならないから、聞こえない。
最も、聞こえたところで最早湊を映していたのかも分からない程に濁った
その瞳にはきっと、届くことさえ叶わないだろう。

頭が警鐘を鳴らし始める。そんな中、ふわり、母親が綺麗に笑った。
「そうよ、そうよ…。ねぇ、湊。私良い事を思いついたわ。」
…否、それはもう、湊の見た幻想だったのかも知れない。
何故なら次の瞬間、母親はニタァと狂った笑みを向けて、



「貴方も、死んでしまえばいいのよ。」



見えない刃を、湊の心臓に突き立てたのだから。



貴方のせいよ。里の騒動も、碇が死んだのも。

だから死ね。死んでしまえば良い。



虚ろになりかけていた湊の瞳が再度見開かれる。ゆれる、ゆれる、水の瞳。
息をしようと開いていた口が閉じられていく。
一筋、零れた水が落ちて、静かに瞼が降りていった。
命の終わりを告げるように、静かに、静かに。


あぁ、貴女がそういうのなら、俺は…
生まれ変わってからでもいい。いつまでだって、願ってるから。

だから、俺のこと、嫌いになら――……







あの時確かに、彼は生きていた。
でもあの時確かに、彼は死んだ。
体と心を半分だけ残して、少年は、死んだのだ。

― …あの、瞬間に。

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